プラモに遊んでもらう

f:id:Ash1974:20210221213734j:image

昨年末に比較的自分のイメージに近い複葉機、しかも張り線も施したものができあがってしまってから、惰性で二月も半ばになってしまった。その間、まったくプラモデルを作っていないわけではないのだが、いまいち心が乗らず、だらだらと作りかけを増やしていくだけだった。

AVIA B.534というチェコスロバキアの戦間期の飛行機を同じくチェコスロバキアのメーカーのキットで作っていたのだけど、これも惰性に近い。一番良くないのは、叙情派プラモデル愛好家なのでさほど知識のない飛行機にあまり思い入れができないという酷い理由だったりもする。ただ、B.534は下翼だけならメッサーとかスピットファイアみたいな第2次大戦期の花形戦闘機のような形をしているのに、なぜか複葉機というのが面白くて手に取ったくらいの思い入れはある。なんというか、風防もないような複葉機全盛期と第2次大戦期の間、進化の途中を表しているような、系統樹のミッシングリンクを見つけたような気持ちで面白がって作っていた。

今回のキットはKPモデルというところのやつなのだが、一見すると昔のエアフィックスのような雰囲気を持ちながら、まったく似て非なるもの。キャノピーは全然合わないし、支柱の位置もデタラメ。胴体の左右を貼り付けると、見事にズレているというキットだった。共産圏時代だからこんなものなのだろうか。で、こういうキットだから組んでもストレスになる人が大半なのかもしれないが、意外と楽しめている自分に驚くほど楽しく作っている。ズレを修正しようと力をかけつつ接着すると、逆側のズレが大きくなる。張り合わせたり、嵌め込んでみると見事に隙間が空く。これをパーツの素材の柔らかさをうかがうようにして力をかけ、隙間はボンドで塞いでいく。普通なら切る、貼るですむ作業が切る、貼る、ズレを直す、隙間埋めるのプラス2工程。

f:id:Ash1974:20210221213923j:image

今日になってなんとか形になり、屋外で缶サフを吹いていたら、手元が狂って落としてしまった。大破。おまけに支柱を1つ亡くしてしまう。雪解け後に支柱は芽を出すことだろう。普通なら精神的なダメージに立ち上がれなくなるところだけど、このキットに関しては「延長戦。ちょっと直してみよう」という気分でそのうち「この作業がこのまま続いてもいいかな」という感情が芽生えてしまった。

まったく不思議なキットである。どうやら僕はこのキットに遊んでもらっているようだ。ちょっと難しくて、ちょっとあきれてしまうようなこのキットはこう作ろうとすると必ず「こうだったらどう?」と次の問題を投げかけてくる。どんなキットでもおそらくちゃんと向き合えば、楽しく遊んでくれるはず。パチピタのキットにはないサッカーボールの取り合いのようなプラモ遊び。こんなプラモの楽しみ方もいいんじゃないだろうか。さて、果たしてB.534は完成するのだろうかという心配はあるけれど。