大人の階段を軽やかに登りたいときのグライダー

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子どもの頃、写真ではなくカラーイラストだけで構成されていた子ども用図鑑を一揃え持ってたのですが、一番読み込んでいたのは飛行機と魚。三つ子の魂百までとは言ったもので、当時から異形好きというか、好きな魚はチョウチンアンコウとオオカミウオ。好きな飛行機は超大型輸送機のグッピーでした。ドラケンとかトゥンナンとか作っている今とほとんど変わらない。

その図鑑はどういう理由なのかわかりませんが、見開きの大きいスペースをグライダーに割いていたのですよ。グライダー。ヘンテコりんな飛行機やバッキバキのジェット機がお気に入りのキッズにとってグライダーというのは、基本的にエンジンが付いていない場合が多いし、やたら翼が大きくてのっぺりとしたイメージしか与えず、まぁ、一言で片付けると「地味」。それに動力がない乗り物に身を委ねて空を飛ぶなんて危険すぎじゃないの?なんでそんなの乗りたいの?くらいに考えてた子どもだったので、いつの間にか頭ではわかっているけど、感情的には眼中にない存在になってしまいました。

そんな子どもも父となり、息子と久々にテニスをした日の夜。脚の激痛と共に目が覚め「捻挫か?骨折か?」と整形外科に赴いたところ、医者いわく「状況を聞くと痛風かもねー。なったことある?」とサラッと宣告するではありませんか。あぁ、大人の階段をまた一つ登ってしまった。。。

その話を聞いたオクサンによって食事は一変、あらゆるプリン体を排除した献立に。するとどうでしょう、昆布だけで採った出汁とか大根の旨味、白く輝く大根を目にして思い出したのは、すべての無駄を削ぎ落とした白く輝き軽やかに風を捕らえるグライダーでした(ちょうどちょっと前に遺品キットからグライダーを発掘して組んだのを思い出しただけなんですけど)。

これまで力任せにグイグイと空を目指して飛んでいたような生活を離れてみると、あらゆる無駄を削ぎ落とし、風をつかまえ、上昇気流に乗って軽やかに駆け上る、そんなグライダー的な生き方、軽やかに着地したいものだなぁという感覚が心に芽生えてグライダーという飛行機がたまらなく素敵なものに見えてきました。グライダーを部屋に飾ると風が生まれます。軽やかな風が。ちょっと目線よりも上に飾ったグライダーが憂鬱な心を少しだけ軽やかに上へと押し上げてくれるのです。